「シンザン記念・G3」(8日、中京)
これぞ血のドラマだ。3歳重賞の一番星を2番人気ライトクオンタムがつかんだ。日本で6頭しかいないディープインパクトのラストクロップ。父の背を知る唯一のジョッキー・武豊は「ディープインパクトは僕にとって特別な馬ですから。重賞を勝ててうれしい」と笑みをこぼした。
スタートで上に飛び上がったこともあり後方に待機したが、直線は大外から一気の伸び。父をほうふつとさせる末脚で前をとらえた。「外に逃げて、いい雰囲気ではなかった。直線にかけるしかなかったけど、ゴーサインによく反応して最後まで伸びた。まだ2回目でこのパフォーマンス。かなり能力がある」と課題を口にしながらも高い性能を評価。「乗った感じは、ディープ産駒というよりもサンデーサイレンス産駒を思い出した」と祖父の姿をだぶらせた。
全13世代でJRA重賞ウイナーを誕生させたディープインパクトはさすがの一語だが、名手も重賞は37年連続Vで、節目の通算350勝に到達。記録について問われ、「“SDGs”な感じでいいんじゃないでしょうか。この調子でいっぱい勝ちたい」とウィットに富んだ言葉を返した。すぐさま最終12Rも制した衰え知らずの53歳。持続可能な目標だろう。
見事、兄弟Vを決めた武幸師は「火曜に440キロあったけど減りますね。勝って時間が取れるのは大きいが、良かったのと課題を直していかないとな、という両方」と複雑な面持ちだが、登竜門を制した意義は大きい。3冠牝馬のジェンティルドンナとアーモンドアイがここから大きく羽ばたいた。ディープの忘れ形見が名牝たちに続く。