※このコラムは『君が心をくれたから』8話までのネタバレを含んでいます。
■あまりに多機能すぎる万能な男・司
約1ヶ月後、視覚を失う雨(永野芽郁)。それを知った恋人の太陽(山田裕貴)は桜祭りで雨に花火を見せることがかなったら、その後は花火師の夢を諦め、雨を支えていくことに専念しようと決意します。
雨の介護と両立するため、別の仕事を紹介してもらえないか、司(白洲迅)にお願いする太陽。
司は、仕事の斡旋から、雨の介護施設の紹介まで手広く請負い、ある時はばあちゃんの願いをかなえる伝書鳩に、ある時は雨の偽装彼氏に、(後述の)挙げ句の果てには婚姻届の証人から、雨が五感を失った後の伝書鳩パート2と、アレクサもびっくりの多機能っぷり。多分、犯罪以外なら何でも無償で引き受けてくれそうです。
しかも、「視覚を失う期限が分かるんですか? 信じます。何か言えない事情があるんですよね」と物分かりまでよすぎます。とにかく使える男です。
そして、主要人物でありながら名前に天気が入っていない理由も分かりました。「つかさ」で傘だったんですね。みんなの困りごとを跳ね除け、大きな傘となってくれている司。とにかくなんかあったら司に情報吹き込んでおけば、うまいこと動いてみんなの運命をいい方向に導いてくれます。
次はどんなファインプレーを繰り出してくれるのでしょうか。
■自分の過去を雨に重ね、追体験しているように見える日下
「雨と生きよう」と決意した太陽は、雨にプロポーズをします。
しかし、雨はその答えを保留。あまりに早すぎるプロポーズの理由が、太陽が読んでいた本にあったことに気づいてしまいます。雨の介護をするために、書類の上でも家族になった方がさまざまな手続がスムーズにいくなど、雨の将来を考えての決断だったのです。
「太陽と一緒にいることが彼の負担になるのでは」と雨が悩み続ける中、案内人・日下(斎藤工)が「それでも彼は支えるかも。五感を失ってからは断る術はない。
プロポーズ受けてみては?」と柄にもなく助言をします。
「雨に肩入れはするな」と言っていた彼がこんな発言をするなんて、なんだか自分の過去を雨に重ねて希望を抱いているようにも見えます。
自分も奇跡の取引をして、人を助けた日下。おそらくその結末は悲しいもので、それを原因に彼は心を失ってしまったけれど、雨と太陽が純粋に相手を思い合う姿を見て、日下も心を取り戻し始めたのかもしれません。
「人間、最後は自分を守る」と言っていたので、日下は裏切られたけれど、太陽たちはそうはならないのでは? とどこかで期待をし、自分はかなわなかった幸せな結末を信じたい、と思っているように見えてなりません。
■前科持ちクラッシャー春陽・2犯目確定
そんな中、やってくるのが感情で生きる女・春陽(出口夏希)。太陽の妹です。高校生の時も、雨と太陽の関係を無神経にクラッシュした前科持ちの女ですが、今回もやってくれました。
「プロポーズ断って。お兄から花火を奪わないで。お願いします。お兄の前からいなくなってください」お前もう少し言い方があるだろうよと。
五感を失いかけてる人間を前に、いなくなってくださいだと? しかも、「雨は太陽から花火を奪おうとしてる」って言ってますけど、お前は「太陽から雨を奪おうとしてる」んですが?
「雨と花火、どちらの方が太陽にとって大切か」を確認もせず、自分の価値観で独りよがりにこれぞ善行だとばかりに関係をぶち壊す。これって、高校の時にやらかしたことと全く同じです。反省したんじゃなかったんかい!
そこで雨は、太陽が自分のために夢を諦めようとしていることを知り、そんな太陽の人生を望んではいない、と身を引くことを改めて決意します。
■千秋の正体と、約束から解放された太陽
一方で、悩む太陽は案内人・千秋に相談をします。
「父さんの期待、母さんとの約束。でも雨がいないとダメなんです」と、花火や約束よりも、自分の中で大きな存在になった雨への気持ちを吐露します。
そして千秋は言うのです。「あなたは間違ってない。跡取りなんてだれでもいい。お母さんが生きてたらこう言うわ。私との約束もどうでもいいのよ。心のままに生きなさい」。その言葉で太陽は解放されます。そして実は千秋は亡くなった太陽の母だということが発覚します。
そんなことはつゆ知らず、母との約束を解消してもらい、自由に生きることを後押ししてもらった太陽。雨を選ぶ人生に迷いがなくなりました。
■雨が母と暮らすことのリスク
毒親だった雨の母・霞美(真飛聖)の退院に合わせて、雨は一緒に遠くに住むことを提案します。太陽の前から姿を消すために頼れるのは母しかいないので、仕方ない部分はありますが、いくら病院で更生したとはいえ、虐待を受けていた母に五感を失った状態で一緒に暮らし、世話を頼むというのはあまりにもリスキーです。
幼い子どもだったとはいえ、五感がある状態でも雨との生活に精神がギリギリだった母が、五感を失い意思疎通もままならなくなった雨を受け止めて、生涯暮らしていくほどの心のキャパはあるのでしょうか?
本来ならお試しで暮らしてみて、無理なら離れるという選択ができますが、もう雨には時間がありません。
■結婚詐欺師、爆誕
太陽の前から静かに消える計画を雨はこっそり進めます。
スムーズに計画を実行するため、雨は結婚詐欺を働くのです。プロポーズを受け、婚姻届を出したふりをして、1ヶ月だけ太陽と擬似結婚生活を過ごす。そして、五感を失ったら「太陽くんは責任感じず自由に生きて」と伝えてもらうよう、多機能で万能な男・司をボイスレコーダー役に任命します。
1ヶ月の間だけは夢だった太陽のお嫁さんとして過ごす。それは幸せでもあり、とても苦しいものでしょう。
これが期限のない現実だったら……と、幸せであればあるほど、胸が締めつけられそうです。
結婚式も雨の手作りで、家で急ぐように二人だけで執り行われます。
とうとう二人初めてのキス。奥手な二人がやっとここまで来た! はずなのに……。そしてどうしてもこれだけはうそがつききれず、一生を誓うための“誓いの言葉”を省略する雨の姿がまた痛々しい……。
せっかく結ばれたと思ったら、また壊れてしまうこの関係。また、ゲームチェンジャー司がどうにかしてくれないか、期待をしながら次回を待ちましょう。頼んだ司!