29日に82歳で死去した「サッカーの王様」ペレさん。20世紀を代表するアスリートを語る上で欠かせないのが、ブラジル代表として17歳で臨んだ1958年ワールドカップ(W杯)スウェーデン大会の決勝で決めたボレーシュートだ。
2―1でスウェーデンをリードしていた後半。左からのクロスをトラップして相手DFをかわした。落ち際の球を蹴り上げ、さらに1人を抜いて裏に回り込み、右足で直接決めた。
高い技術とスピードが凝縮されたゴールは、2018年W杯ロシア大会でフランスのエムバペ選手(パリ・サンジェルマン)が19歳でゴールするまで、10代の若者がW杯の決勝で決めた唯一の得点だった。スウェーデン大会において6ゴールでブラジルに初の栄冠をもたらし、ペレさんの背番号「10」はエースの象徴となった。
緩急をつけたドリブル、両足でゴールを捉える技巧、身長170センチほどの体格ながらヘディングを得意とする跳躍力も武器だった。4大会連続でW杯に出場し、62年チリ大会、70年メキシコ大会を含めて頂点に3度立った。
66年イングランド大会ではペレさんを止めようとラフプレーが横行した。ペレさんがけがに見舞われ、ブラジルが3連覇を逃し、続く70年大会からはイエローカード(警告)とレッドカード(退場)が導入された。
00年に国際サッカー連盟(FIFA)が発表した20世紀最優秀選手はインターネット上の一般投票で故ディエゴ・マラドーナさん(アルゼンチン)、サッカー関係者による投票でペレさんがそれぞれ選出された。
強烈な左足とドリブルが代名詞のマラドーナさんに対し、ペレさんはW杯3回優勝の実績と万能さが際立つ。その生涯はブラジルをサッカー王国に飛躍させ、現代サッカーを形作る上で大きな歩みとなった。