『エンタの神様』(日本テレビ系)に出演し人気を博したお笑い芸人キックに、パクリ疑惑が生じている。キックが名古屋のテレビ局メ〜テレの子会社が運営するCSチャンネル『超ムーの世界R』内で披露した怪談話の内容が、自身の著作に酷似していると作家の小原猛氏がツイッター上で抗議。さらに小原氏は「これが許されれば、すべての怪談本はすべての怪談師のネタ本となり、命を削って取材して書いたそれらの文字は、一瞬にして命を失う」とも書き込んでいる。
キックは番組降板を申し出、小原氏は弁護士を立ててキック側と交渉を行っているとされている。
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今回のケースは芸人同士のネタのパクリ疑惑ではなく、元ネタの著作があり、許諾や引用元の明示などが行われていなかった点が問題になったと言える。そこで思い出されるのが、くりぃむしちゅーの上田晋也の「うんちく芸」だ。
上田は90年代に有田哲平と海砂利水魚を結成し、『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)シリーズなどに出演していたが、爆笑問題やネプチューンにブレークでは遅れを取った。2001年には芸名を現在の「くりぃむしちゅー」に改名するもぱっとせず、くすぶっていた上田がブレークするきっかけとなったのが、深夜番組『虎の門』(テレビ朝日系)で行われた「うんちく王決定戦」だった。
上田はこの番組で伊集院光や山田五郎氏などと並んで、うんちくを披露していった。そこで持ち前の話芸や、知的なキャラクターが注目されブレークへ繋がる。
ところが、上田の披露するうんちくには元ネタがあり、雑学ライターの杉村喜光氏の著作『知泉:元祖「ヘェ〜」716連発』(二見書房)に依っていると明らかに。うんちくなので書籍などの資料を参照することはあっても良いだろうが、上田の場合は話の運び方なども同書と同じ「丸暗記」だったため、物議を醸した。
ただ、企画が行われた『虎の門』が深夜番組だったのと、2000年代始めはネットが今より普及していなかったためか、上田のパクリ疑惑は曖昧なまま終わった。上田は「うんちく芸」を封印し、話芸によってブレークを果たしていった。
芸人のネタのパクリ疑惑は、あらゆる場所で取り沙汰されている。たまたま似てしまったケースもあるだろうが、キックや上田の場合は、やはり元ネタへの敬意を払うべきであったのかもしれない。