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地球に落下した3つの隕石すべてに、生命の設計図である遺伝子に使用される材料が発見されたそうだ。
『Nature Communications』(4月26日付)に掲載された研究では、世界各地に落下した3種類の隕石を調査。その中には、遺伝子を記録する基本材料「核酸塩基」がすべて含まれていた。
地球の生命は、宇宙からもたらされた”種”から誕生したというパンスペルミア説などの仮説あるが、今回の発見はそれを裏付ける強力な証拠になるかもしれない。・地球に落下した隕石の中にDNAやRNAの材料を発見
北海道大学をはじめとする研究グループは、マーチソン隕石(1969年、オーストラリアに落下)、タギシュ・レイク隕石(1950年、カナダ)、マレー隕石(1950年、米国)からサンプルを採取し、分析を試みた。
北海道大学の大場康弘准教授は、その結果について次のように語っている。今回の研究で、生物学的に重要な分子が炭素質隕石から検出されました。これは生命が誕生する前に、それらが地球にもたらされていたということです。
分子による遺伝的機能の発生と生命の誕生において、何らかの役割を果たした可能性があります
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・生命の設計図となる核酸塩基すべてが1つの隕石から検出
質量分析によって隕石の中から発見されたのは、すべての生物の遺伝情報を持っている生体分子の「核酸塩基」だ。
核酸塩基には2種類ある。1つは「ピリミジン塩基」で、シトシン、チミン、ウラシルの3種がこれに分類される。
窒素原子2個を持つ六角形の環構造が特徴で、DNAやRNAの二重螺旋構造には必要不可欠なものだ。
今回、マーチソン隕石からは3種のピリミジン塩基すべてが発見されている。このことは、形成されて間もない地球に、隕石によって核酸塩基がもたらされ、DNAやRNAの材料として利用されたかもしれないということだ。
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マーチソン隕石のかけら。生命誕生の謎を解く重要なヒントかもしれない / image credit:NASA
核酸塩基のもう1つのタイプが「プリン塩基」だ。こちらもマーチソン隕石から大量に発見されている。だが周囲の土からは見つからなかった。
つまり、それらが宇宙からもたらされたということだ。なお、プリン塩基は、タギシュ・レイク隕石やマレー隕石からも少量だが検出されている。
両隕石に含まれている核酸塩基の量が違うのは、マーチソン隕石とはまた違うプロセスを経ているからだと考えられる。
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核酸塩基を古代の地球に運ぶ流星物質の概念画像。核酸塩基の中の水素原子が白、炭素は黒、窒素は青、酸素が赤で示されている。/ image credit:NASA・小惑星が生命の起源を解き明かす
こうした核酸塩基はなぜ隕石の中に形成されたのだろうか? その答えはまだわからない。
しかし地球近傍小惑星から回収されたサンプルが、それを解明するヒントになるかもしれない。
JAXAの探査機「はやぶさ2」がすでに小惑星「リュウグウ」からサンプルを持ち帰っているし、NASAの「オサイリス・レックス」も小惑星「ベンヌ」からの手土産を携え、帰還の途についているところだ。
「リュウグウとベンヌでどんな発見ができるか楽しみです」と、研究グループの一員である地球生物化学センターの高野淑識博士は語る。
彼ははやぶさ2とオサイリス・レックスの両方に携わり、生命の起源が宇宙にあるという仮説の検証に挑んでいる。References:Astronomers just found 2 new building blocks of life in meteorites / Identifying the wide diversity of extraterrestrial purine and pyrimidine nucleobases in carbonaceous meteorites | Nature Communications / written by hiroching / edited by / parumo