俳優の小栗旬(39)が主演するNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(総合、日曜、後8・00)が、9日に幕を開ける。脚本家の三谷幸喜氏(60)が筆を執り、演じるのは鎌倉幕府の2代目執権・北条義時。初代将軍の源頼朝亡き後、家臣団13人の激しい内部抗争を制して最高権力者となるダークヒーローを、無垢(むく)な青年期から照らし、感情移入させていく難役だ。
振り回される小栗が新鮮だ。一方で、年間を通して毒を帯びていく様を期待する視聴者が増えていくことも想像される。
「頼朝さんの死までは激動なんですよね。結構な人が死んでいく。13人の合議制になってからは落ち着きを取り戻すはずなんですけど、振り回される。63歳くらいで亡くなっているんですけど、『心が休まる瞬間は片時もなかったんじゃないかな?』と思います」
後に姉の政子が嫁ぐ源頼朝と出会ったことで運命をねじれさせていく義時。「新選組!」(04年)、「真田丸」(16年)に続き、3度目の大河となる三谷氏の持ち味が鮮明な序盤の軽妙さから、徐々に物語は重みを増していく。
20話前後まで撮影が進んでいる小栗は「既に半年間撮影していて、ずっと義時のことを考えています。『なんで北条義時ってこんなことしたんだろう?』って、向こう1年弱考えているというのは、豊かな時間を過ごさせていただいているのかなと思います」と、結末に向けての変遷と対じ。頼朝に愛憎半ばする感情を抱き、影響を受け、変化していく義時を重層的に体現していく。
8回目の大河出演で初の座長。コロナ禍を逆転の発想で味方に付け、現場を盛り上げている。本番以外は装着必須なマスクに連日、メッセージを書き込み、スタッフの最終日や誕生日を告知。大泉ら共演者へのイジりもぬかりない。
「最初はマスクを(漫画『キン肉マン』の)ロビンマスクみたいにしていたんですけど、誰にも触れられなかったので、途中からメッセージにしました。今日で最後のスタッフさんがいるとき、その人の名前と『お疲れさまでした』と書くだけで伝わる。キャストの誕生日は知られていても、スタッフさんの誕生日は知らなかったりするので」
大泉洋(48)演じる頼朝のせいで重苦しくなるシーンの撮影日には「全部、大泉のせい」と書き、爆笑をさらった。「毎日続けていて、ネタがなくなってきているんですけど、何も書かずに行ったら『今日、何かあったんですか?』と言われてしまったので、楽しみにしてくれているんだな、と。なので、マスクを取らなきゃいけなくなるまでは、やり続けないといけないのかなと思っています」といたずらっぽく笑う。
年をまたぐ長丁場の撮影だが、役作りで1日2食の生活を継続。心労のピークを迎える晩年期は当時の食生活も含め「痩せていたはず」と推察し、体重をコントロールしている。食事の間を14時間は空けるように設定し、年間を通した役作りにプロ魂がにじむ。
2023年の大河「どうする家康」に主演する嵐の松本潤(38)は、02年のドラマ「ごくせん」で共演するなど10代から切磋琢磨(せっさたくま)してきた戦友だ。
大河話もするといい、「『タイミングが合えば、一緒に乗馬に行こうか?』って話はしてます。『大河の撮影どう?』『楽しくやってるよ』『そうかぁ、自分も楽しくできたらいいんだけどなぁ』って話したり。自分も去年の12月くらいは不安を感じていたので、彼もその中にいるんだろうなっていうのは感じます」。互いを高め合う関係性が、熱量につながっている。
今年の抱負を聞かれ、「今まで俳優として得られなかったものが手に入る年になるのかなと思う」と表情を引き締めた。父の影響で阪神ファンだけに、寅年を“大河&タイガー”な1年にすべく「現役時代から矢野監督が好きだったので、一緒に駆け抜けたい」と燃えている。
◇小栗旬(おぐり・しゅん) 1982年12月26日生まれ、東京都出身。98年のドラマ「GTO」で連ドラ初レギュラー。「ごくせん」「花より男子」でブレーク。主演級に成長し、映画、ドラマ、舞台で多くの名作、ヒット作に出演。21年には映画「ゴジラvsコング」でハリウッドデビュー。大河ドラマは「天地人」(09年)の石田三成役、「八重の桜」(13年)の吉田松陰役、「西郷どん」(18年)の坂本龍馬役などに続き8作目。