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東京五輪に殺される都民。首都直下地震発生時の逃げ場を奪った“戦犯”の名

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 かつては地元住人の憩いの場であった、世田谷区の馬事公苑。しかし、東京五輪馬術競技の会場となることが決まり、納税者たる住民の反対を無視した改修工事が行われた結果、都内の貴重な「自然」は大きく姿を変えてしまったようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、同公苑でどれだけ破壊的で税金の無駄遣いとしか言いようがない工事が強行されてきたかを記すとともに、世田谷区の広域避難場所を2023年までの7年間に渡り住民の立ち入りを禁止する政治の横暴を強く批判。その上で「戦犯」として3人の名を挙げ、有権者に対し次の選挙で民意を突きつけることを強く勧めています。

東京五輪は負のレガシー

25年くらい世田谷区のニコタマに住んでいたあたしにとって、何よりの憩いの場は目の前の多摩川でしたが、あたしは競馬が大好きなので、原チャリで10分も掛からずに行くことができる用賀の「馬事公苑(ばじこうえん)」にもチョコチョコと行っていました。「馬事公苑」はJRA日本中央競馬会)が所有する馬術競技の施設ですが、誰でも無料で入れる上に、約18ヘクタール、東京ドーム約4個分もの広大な敷地の奥には自然林が広がり、散策コースや子どもの遊び場もあるので、周辺の人々の憩いの場になっていました。

どうして「なっていました」と過去形で書いたのかと言うと、この「馬事公苑」が東京五輪馬術競技の会場になってしまったため、2016年いっぱいで閉鎖され、以来、ずっと改修工事が行なわれて来たからです。5年もかけて行われた改修工事の内容は、メインアリーナ、インドアアリーナ、メインオフィス、管理センター、審判棟、厩舎(きゅうしゃ)などの新設や建て替えから、馬場の砂の全面入れ替えに至るまで、とても規模の大きなものでした。

しかし、2017年に工事が始まると、周辺住民たちから不安の声が聞かれるようになったのです。それは、半世紀以上に渡って市民に憩いを与えてくれた美しい自然林の木々が、無惨にも次々と伐り倒されて行ったからです。工事中は、関係者以外は中には入れませんし、中を覗かれないように周囲は目隠しされていました。しかし、その隙間から中を覗くと、20メートル以上もある立派な木々が容赦なく伐採され続けていたのです。

そして、多くの人々に愛された自然林を伐採したスペースに建設されたのは、メインアリーナを囲む9,300人収容の巨大な観客席と、夜間の競技に向けての大型照明塔8基でした。大井競馬などでは夜間のレースも行なわれていますが、馬術競技は基本的に夜間には行ないませんので、この大型照明塔は、アメリカのテレビ局の放送時間に合わせるためのものです。もちろん、巨大な観客席も、今回の東京五輪のためだけの施設です。

今回の改修工事は、大きく2つに分けられます。もともと老朽化のため改修の必要があったインドアアリーナや厩舎などは、五輪後も使用する「恒久施設」なので、費用はもちろん「馬事公苑」の所有者であるJRAが負担しました。今回は総額317億円が投入されましたが、原資はあたしを含めた全国の競馬ファンから巻き上げた25%という法外なテラ銭です。

一方、東京五輪のためだけに建設された巨大な観客席や大型照明塔などは、五輪後には必要なくなる「仮設施設」なので、費用はJOCの管轄になります。今回は総額294億円が投入されましたが、原資はあたしを含めた全国の納税者の納めた税金です。あたしの場合は東京都民なので、都と国から二重取りされています。

今回の改修工事の日程は、2017年1月から東京五輪開催までが「第1期工事」、東京五輪終了から2023年秋までが「第2期工事」となっています。東京五輪が終わっても、市民はその後2年間も「馬事公苑」に入ることができないのです。それは、2年間かけて建設した巨大な観客席や大型照明塔などの「仮設施設」を、2年間かけて解体して運び出すからです。

わずか2週間の五輪のために、294億円もの税金を使って「仮設施設」を建設するのもどうかと思いますが、百歩ゆずって、それでもその施設が五輪で有効に使われ、多くの観客が素晴らしい馬術に感動したのなら、それは無駄とは言えません。しかし、東京都に4回目の緊急事態宣言が発令されたことを受けて、JOCIOC、政府、東京都などは、7月8日、都内の全会場を「無観客開催」にすると決定したのです。当然、馬術も例外ではありません。

つまり、あたしちの税金を294億円も使って建設された9,300人収容の巨大な観客席は、誰1人として座ることなく、東京五輪終了に解体されるのです。これほどの税金の無駄遣いが他にあるでしょうか?「新型コロナだから仕方ない」と言う人もいるかもしれませんが、大切な自然林を伐採してまでの大型工事には、計画段階から多くの周辺住民が「反対」の声をあげており、従来の観客席を改築増設する簡易プランなども提示していたのです。

しかし、チケット収入に目が眩んだJOCは、周辺住民の声など無視して、脳内で9300人×日数分のチケット代の「獲らぬ狸の皮算用」をしつつ、このバカバカしい工事を強行したのです。もちろん、これは氷山の一角であって、これと同じ事例が、都内の数々の会場で発生しています。そして、JOC皮算用していた900億円超のチケット収入の赤字は、あたしたち都民が尻ぬぐいさせられるのです。

 

 

参照元https://www.mag2.com/