欧米を中心に患者が増加しているウイルス感染症の「サル痘」について、厚生労働省や東京都は25日、都内の30代男性の感染が確認されたと発表した。国内での感染確認は初めて。男性は6月下旬~7月中旬に欧州に滞在し、帰国後の7月15日に倦怠(けんたい)感を訴え、25日に受診した。渡航先で、後にサル痘と診断された人と接触歴があった。発熱や発疹、頭痛、倦怠感の症状があり都内の医療機関に入院中。状態は安定している。
政府は25日、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したことを受け、関係省庁会議を開催。諸外国の情報収集に加え、医療機関の患者の受け入れや検査の体制の準備を進める方針を確認した。
外務省はサル痘に関し、全世界を対象に、渡航に十分な注意を促す感染症危険情報レベル1を出した。発症予防には天然痘ワクチンが有効とされ、厚労省の専門部会は29日、サル痘予防に使うことの可否を審議する。
政府は既に患者発生に備えて天然痘ワクチンの接種や、未承認の薬を投与するための臨床研究体制を整備。薬は東京、愛知、大阪、沖縄の4都府県で投与できる。会議ではさらに、原因となるウイルスの感染力や病原性、感染防止策などを的確に周知し、出入国者に注意喚起することを確認した。
サル痘は5月以降、アフリカ中西部以外で感染例が続出。WHOは23日、75カ国・地域で患者が1万6千人超、死者はアフリカで5人と公表。患者の体液や患部との接触、寝具などを介して感染し、大半は軽症で回復する。WHOによると、患者には男性の同性愛者が多い。