第64回 九十九とんこつラーメン
■ラーメン女性芸能人ランキング3冠を達成した新垣結衣
アイドルだってメシを食う。中で最も手っ取り早いのがラーメンだ。したがって、当連載もついラーメンの話題が多くなってしまうが、どうも若手女優には麺好きが多いらしい。
というのも、映画やドラマの撮影は分刻み。最近の作品はスタジオにセットを組むより安上がりなので、ロケーション撮影重視だ。食事も多くはロケ弁かせいぜいケータリングで賄われる。その点、ラーメンだったら街中でのロケなら、休憩時にサクッと食べられる。
メジャーな映画会社以外、食堂のある撮影所も少ない(ちなみに東映の食堂は学食並みに安く、おいしいと評判。日活のカツカレーは高橋英樹の「人生最高の一品」とか)。テレビ局内のスタジオなら食堂も利用できるが、一般人が簡単に立ち入れず、どこがおいしいとの噂もあまり聞かない。
以前に某誌で“出前メシ”という特集を担当したが、局内でも現在、タレントの食事は弁当やカレーなどのデリバリーが中心になっている様子だ。女優や歌手にもラーメン女子が増殖するわけである。
さて、17年にマルハニチロが行った「ラーメンとチャーハンに関する消費者実態調査」において、女性芸能人ランキングで3冠を達成したのが新垣結衣だ。
『ラーメンを食べる姿もカワイすぎて惚れてしまう芸能人』、『ご当地ラーメンを食べに行くラーメンデートをしたい芸能人』、『寒い日にあったかいラーメンを自宅で一緒に食べて癒されたい芸能人』の3部門で、次点の綾瀬はるかや石原さとみを大きく引き離して圧勝。さすがの♪すぐおいし〜、すごくおいし〜CM効果を見せつけた。
そう、ガッキーといえば、日清食品「チキンラーメン」復興の立役者。13年から足かけ7年に渡るCM出演が続いていた。チキンラーメンは丼に入れて湯を注げばでき上がる、元祖インスタント麺。日清が変わらず大事にしてきたのは、「食べてみたい」というトライアルの気持ちを起こすことだという。
ガッキーはそこで、「つけ麺にしてもおいしい」とか、卵の白身にお湯をかけて「しろたま」を作るなど、様々な食べ方提案を担ってきた。さらに「雪の中で食べるとおいしい」などの、オケージョン訴求も展開。18年には面倒臭がりの「ぐで垣結衣」に扮し、商品キャラのひよこちゃんと絡んでもみせた。
まさにチキンラーメンの顔。それが昨年9月からお笑い芸人のぺこぱと交代し、ガッカリしたファンも多いだろう。18年からチキンラーメンのCMを手がける電通のエグゼクティブ・クリエイティブディレクター、東畑幸多氏によると、日清側からぺこぱ起用を提案してきたのだとか(「日経クロストレンド」21年03月02日付の記事参照)。
彼らの全肯定の笑いが、チキンラーメンが持つ親しみに合う、というのがその理由だ。ぼくも何度か同社を取材したが、非常に懐の深い会社で、そんなやりとりを聞いても得心が行く。
■チキンラーメンCMはやめてもラーメンはやめられない
しかし、7年かけてラーメン女王のイメージを確立したガッキーが、別商品のCMにスライドするならともかく、単に降板というのは、やはり腑に落ちない。
あの大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)放映時から5年。以降、仕事を選ぶようになったガッキーの露出が極端に減ったとは、各誌が伝える通りだ。心配にもなるではないか。
今年1月2日放送のスペシャル版『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』では、変わらぬ愛らしさを見せたのに、33歳という年齢が「曲がり角」で、日々の鯨飲のため「ビール腹」などと、ろくに取材もしないネットメディアが書き立て、ファンの不安を煽った。
確かにGMOクリック証券のCMでは、思うままに生きる旅人の姿を晒しているので、そうやってドラマや映画から離れてしまうのかと誤解しなくもない。
だが、どうやら今年10月には『逃げ恥』の放送枠「火曜ドラマ」での主演作が決まっているらしい。コロナ禍で大ヒットした任天堂の「あつまれ どうぶつの森」新CMにも出演と、まだまだ彼女の全盛期は続く。あとは主演女優賞級の映画のヒット作に恵まれれば、鬼に金棒だろう。
もっとも、バラエティに出て、意外な酒豪ぶりを告白しても、食生活のディテールはなかなか明かさないガッキー。彼女が愛するラーメン店とは……?
それが灯台下暗し。14年11月、おっかなびっくり、九十九とんこつラーメン恵比寿店に潜入する様子がすでにフライデーされていた。おひとり様に見えるが、マネージャーらしき女性が映り込んでもいる。
伊達眼鏡にほぼ素っぴん。ネットでは「私服が案外ダサい」などと散々な言われようだが、ボーイッシュなサスペンダー&パンツにラフなネルシャツ姿は、変装としてはある意味完璧だ。
それにしてもスレンダー! こんな細い身体で超こってりな九十九ラーメンを愛好しているとは!!
1997年に創業した同店は、白濁したマイルドなスープが売り。券売機で麺の太さ・タレの濃さ・脂の量を選択できるのも特徴だ。
基本トッピングはチャーシュー・メンマ・海苔。卓上には味付けもやし・ネギ・胡麻・辛みタレ等が用意され、カスタマイズ自在な点も評価できる。
商標登録もされているチーズラーメンが一番人気で、その他にトマトチーズ・九十九豚骨・醤油豚骨・味噌豚骨・パクチー・野菜たっぷり、また夜限定でチリチキンラーメンを提供する。女性客を意識したメニューが多いだけに、実際に女性客が目立つ。
かつては飯田橋にもあったので、本店を含め、ぼくも何度か利用したが、ノーマルなラーメンはごく食べやすい。しかし、とんこつラーメンにチーズ載せというのは、色味は合うがなかなかにくどく、好みの分かれるところだろう。
ガッキーはフライデーされた時、スタンダードな九十九豚骨ラーメンを食べたとされる。チキンラーメンで数々の挑戦をこなしてきたわりに、ガッキーの好みもノーマルだったということか…。