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古代ナミビアの宝石が未来の量子コンピューターの鍵を握る

古代ナミビアの宝石が未来の量子コンピューターの鍵を握る
古代ナミビアの宝石が未来の量子コンピューターの鍵を握る

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University of St Andrews

 セント・アンドリューズ大学(スコットランド)をはじめとするグループによると、古代ナミビアの宝石によって紡ぎ出された特殊な光は、光をベースとした量子コンピューター開発の鍵を握っているそうだ。

 同グループは、ナミビアで採取された「酸化銅(I) (Cu2O)」で組成された宝石を使って、これまでで最大の光と物質のハイブリッド粒子「リュードベリ・ポラリトン(Rydberg polaritons)」を作り出すことに成功。

 その成果を『Nature Materials』(2022年4月14日付)で発表した。

・光と物質のハイブリッド粒子「リュードベリ・ポラリトン
 光と物質のハイブリッド粒子であるリュードベリ・ポラリトン(Rydberg polaritons)は、光から物質、物質から光へと連続的に変化する。

 この粒子にとって光と物質はコインの裏表のようなもので、物質面のおかげで互いに相互作用することができる。

 この相互作用は、「量子シミュレーター」という特殊な量子コンピューターを開発する鍵となる。

 量子コンピューターの情報は「量子ビット」として保存される。従来のコンピューターで用いられる「バイナリー・ビット」は、0か1だけで表される。

 ところが量子ビットは0と1いずれか一方だけでなく、0と1を同時に表すことができる。量子コンピューターがはるかに多くの情報を保存し、複数の処理を同時にこなせるのはこのためだ。
 それによってパワフルに作動する量子シミュレーターならば、物理学・化学・生物学など各分野の難問を解くことができるだろう。

 高温超伝導体による高速鉄道の実現、安い肥料による世界の食糧不足問題の解決、タンパク質の折り畳み解明による創薬などなど、これらは量子シミュレーターによって期待される成果のほんの一例だ。

 研究グループの中心人物ハミド・ハディ教授は、「光を使った量子シミュレーターは、科学の聖杯です」と語る。開発の鍵となるリュードベリ・ポラリトンの生成に成功したことで、その実現へ向けて大きく前進したとのことだ。

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photo by iStock

・合わせ鏡で閉じ込めた光からハイブリッド粒子を生成
 リュードベリ・ポラリトンを生成するには、まず反射率の高い2枚の鏡の間に光を閉じ込めねばならない。それから酸化銅(I) (Cu2O)結晶を薄く磨いて作った厚さ30マイクロメートルの板を鏡に挟む。こうして生成されたリュードベリ・ポラリトンは、従来のものより100倍も大きい。

 なお研究グループは、実験に使われた酸化銅(I) を含む赤銅鉱 をネットオークションサイト「eBay」で購入したとのこと。色の範囲がきわめて狭いリュードベリ・ポラリトンの生成は至難の技だが、素材を手に入れるだけなら簡単だ。

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赤銅鉱は、金属に似た光沢、またはダイヤモンドのような光沢のある赤みがかった銅酸化鉱物で、組成は酸化銅(I)(Cu2O) / image credit:iStock

 研究グループは現在、この生成法を洗練させ、やはり量子シミュレーターに必須の「量子回路」を作成する方法を探っているところだ。
 

参照元:https://dailynewsonline.jp/